発達障害は、生まれつき脳の発達に偏りがあることによって、認知や行動、コミュニケーションの面で特有の困難を抱える状態を指します。本人の努力不足や育て方の問題ではなく、脳の働き方の違いによって起こる「発達の特性」です。
発達障害における脳の発達(≒脳の機能)には様々な偏り方があります。そのため、一括りに発達障害と言っても多種多様な症状や困りごとが含まれます。
偏り方にはいくつかのパターンがあり、現在の日本の診断基準(DSM-5)では、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、SLD(限局性学習症、一般的には学習障害)が含まれます。
学習障害は、知的能力や学習意欲には問題がないのに、特定の学習分野(読み書き・計算・推論など)でつまずきがある状態を指します。
読字障害(ディスレクシア)、計算障害(ディスカリキュリア)、書字表出障害などが含まれます。
発達障害の一部として位置づけられることもありますが、知的障害とは異なります。
DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)では、学習障害は「限局性学習症(Specific Learning Disorder, SLD)」として分類されます。
SLDは、知的能力に問題がないにもかかわらず、特定の学習分野で持続的な困難がある状態を指します。
| 読字障害(Reading disorder) | 読みの困難 |
|---|---|
| 書字表出障害(Writing disorder) | 文字を書くことや文章作成の困難 |
| 算数障害(Mathematics disorder) | 計算や数的推論の困難 |
日常的には「学習障害」と呼ばれることが多く、学習障害=SLDの一般的な呼び方と考えて差し支えありません。
学習障害(SLD)は、血液検査や画像検査で明確に診断できるものではありません。
学習のつまずきの程度やパターン、発達歴、学習環境などを総合的に評価して判断します。また、心理士による知能検査(WAISなど)や学習能力評価、学校での学習記録なども参考にします。
視覚や聴覚の機能の評価も診断の参考になる場合がありますが、専門の設備が必要なため、受けられる施設は限られています。
診断は、医師や心理士による面談・検査結果・学習歴の総合判断で行われます。なお、知的障害や心理的ストレスが原因でないことも条件になります。
現在のところ、学習障害を根本的に治す薬はありません。
しかし併存する精神症状を治療することで、学習の問題に対応しやすくなることがあります。
主な治療方針は、支援・環境調整・心理的介入です。
学習障害の症状は、ほかの疾患と似ていることがあります。誤診されやすいものには以下があります。
| 注意欠陥多動性障害 | 集中力や注意の問題から学習のつまずきが目立つことがあります |
|---|---|
| うつ病・不安障害 | 学習意欲の低下や集中力低下が原因で学習困難に見える場合があります |
| 発達障害(自閉スペクトラム症) | 社会性やコミュニケーションの特徴が学習のつまずきに影響している場合があります |
| 知的障害 | 知能全体に低さがある場合は学習障害とは区別されます |
学習障害は本人の努力不足ではありません。環境や支援方法によって、学習のしやすさは大きく改善できます。
早期に診断・支援を受けることで、学習へのストレスや自己評価の低下を軽減することができます。また、学校や職場での合理的配慮や補助ツールの活用も重要です。