注意欠陥多動性障害(ADHD)は、注意が散漫になりやすく、落ち着きがない、物事を順序立てて行うのが難しいなどの特徴を持つ発達障害です。
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ADHDは、症状だけで判断せず、心理検査や医師の診察を組み合わせて診断されます。
ADHDは、不注意優勢型、多動・衝動型、混合型(不注意+多動・衝動)の3つに分かれます。
不注意優勢型では、集中力が続かず忘れ物が多く、宿題や仕事の抜け漏れが生じます。このタイプにはアトモキセチンが中心に使われます。
多動・衝動型では、じっとできない、思いついたことをすぐ行動してしまうことが特徴で、会議中や授業中に席を離れる、順番を待てないといった困りごとが目立ちます。インチュニブが中心の治療になります。
混合型では、不注意と多動・衝動の両方が見られるため、両方の薬を組み合わせて対応することもあります。
当院では、インチュニブ(グアンファシン)とアトモキセチン(ストラテラ)を中心に治療しています。
インチュニブは多動・衝動性を改善し、鎮静作用があるため寝付き改善にも役立つことがあります。アトモキセチンは注意力や集中力を改善し、不注意優勢型や混合型の方で使用されます。
メチルフェニデート(コンサータ)は当院では使用できないため、希望される場合は他院にご紹介します。薬物療法は生活状況に合わせて調整され、薬だけでなく生活の工夫や行動療法、環境調整と組み合わせることでより効果的です。
ADHDは環境やストレスに影響されやすく、疲労や過密なスケジュールでは注意力低下や多動・衝動が強く出ます。睡眠不足や緊張が続くと、忘れ物やイライラも増え、二次的に適応障害や気分の落ち込みが生じることもあります。
作業量や休憩の調整、静かな作業環境の確保、睡眠・食事・運動のバランスの整備、カウンセリングでのストレス整理など、生活全体での工夫が大切です。必要に応じて薬物療法で症状を安定させます。
ADHDでは、注意の散漫や多動・衝動性により日常生活で失敗や困りごとが増えます。その結果、自己評価が下がり、不安や気分の落ち込みなどの二次障害が生じやすくなります。また、注意力の乱れや落ち着きのなさ、緊張感が続くことで寝付きが悪くなり、睡眠障害も起きやすくなります。薬の影響も個人差があり、治療における調整が必要です。
ADHDとASD(自閉スペクトラム症)は別の発達障害ですが、両方の特性を持つ方もいます。
ADHDでは注意散漫や多動・衝動が、ASDでは社会的困難や強いこだわり、環境変化への苦手さが特徴です。両方が重なると、学校や職場での困りごとが増え、スケジュール管理や優先順位の決定がさらに難しくなります。また、ストレスや疲労がたまりやすく、二次障害や不安症状が起きやすくなります。
治療や支援は、ADHD症状には薬物療法(インチュニブ・ストラテラ)、ASD特性には環境調整や行動療法、生活ルールの工夫を組み合わせます。両方の特性に応じた支援を行うことで、学習や仕事、日常生活の困りごとは軽減できます。
ADHDと双極性障害は似た症状があるため誤解されることがあります。ADHDは子どもの頃から症状が持続しますが、双極性障害は気分の波が明確で周期的(躁・抑うつのエピソード)です。ADHDと双極性障害の両方が重なっていることがあるため注意が必要です。ADHDの気分の変動は日内や数日単位で起きることが多く、双極性障害の基文の変動は数週間から数ヶ月単位で続くことが一般的です。
生活リズムを整える工夫やチェックリストの活用、行動の振り返りや良かった行動を褒めることが有効です。カウンセリングでは困りごとやストレスの整理を行い、対処法を学ぶことができます。
学校では宿題や提出方法の工夫、授業中の座席調整など、職場では仕事手順の整理や作業時間の区切り方など、環境に合わせたサポートが有効です。
ADHDの治療は、診断・心理検査・薬物療法・行動療法・環境調整・睡眠対策・ストレス管理を組み合わせることで、より過ごしやすい日常を作ることができます。当院ではWAISを必須で実施して診断や支援方針に活用し、ASRSなどの自己評価も診断の補助として用いています。