不安障害に含まれる疾患

パニック障害や強迫性障害、全般性不安障害などの「不安障害」に含まれる病気は、不安や緊張を感じる脳の働きが強くなりすぎていることが共通しています。

脳の中では、危険を感じ取る「扁桃体(へんとうたい)」という部分が過敏になり、気持ちを落ち着かせる前頭葉の働きがうまくいかなくなります。さらに、気分を安定させる「セロトニン」や「ノルアドレナリン」という物質のバランスも乱れています。

それぞれの違いは次の通りです。

パニック障害 体の反応(動悸や息苦しさなど)を危険と感じてしまい、急に強い不安発作が起こる。
強迫性障害 不安を減らすために、同じ考えや行動を何度も繰り返してしまう。
全般性不安障害 特定の理由がなくても、常に心配や不安が続く。

どの病気も「不安のブレーキがききにくくなる」ことで起こるため、当院では薬による治療を中心に、症状の改善を図ります。
なお、当院では認知行動療法は行っていません。また、慢性期の強迫性障害の治療は得意としていませんので、その場合は専門施設へのご紹介を行うことがあります。

パニック障害

パニック障害は、突然の強い不安や動悸、息苦しさ、めまいなどの発作が繰り返し起こる状態です。発作自体は命に関わるものではありませんが、「また発作が起こるのでは…」という恐怖が日常生活に影響することがあります。

治療の基本方針

パニック障害の治療は、急性期と長期予後で役割が異なります。

急性期:薬物療法が必須

発作や強い不安が頻繁に起こる時期には、まず症状を落ち着かせることが重要です。

よく使用される薬
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) 発作や慢性的な不安を和らげます。効果が出るまで数週間かかることがあります。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬 発作時に症状をすぐに和らげます。長期使用は依存のリスクがあるため、医師の指示で使用します。

薬の副作用として、眠気やふらつき、吐き気などが出ることがあります。

長期予後:改善には心理教育が有効

発作を抑えるだけでなく、再発を防ぎ、生活の質を改善することが目的です。

効果的な方法
心理教育 発作の仕組みや不安のメカニズムを理解し、対処法を身につけます。
セルフケア 呼吸法、生活リズムの改善、適度な運動なども補助的に有効です。

当院のカウンセリングでは、パニック障害に対する専門的な認知行動療法には対応していません。心理教育を中心にカウンセリングを実施することは可能ですのでご希望される方はご相談ください。

日常生活でできること

  • 過度なカフェインやアルコールを控える
  • 十分な睡眠をとる
  • 発作時の落ち着く方法を学ぶ

まとめ

  • 急性期には薬物療法で発作を抑えることが第一です。
  • 長期的には、心理教育やセルフケアで再発予防や生活改善を目指します。
  • 個人差があるため、医師と相談しながら自分に合った治療を選ぶことが大切です。

強迫性障害とは

強迫性障害(OCD)は、不合理と自覚しつつも特定の考えやイメージが繰り返し浮かび、それを打ち消すための行動を繰り返してしまう状態を指します。
「やめたいのにやめられない考えや行動(=強迫観念)」が特徴で、多くは不安を和らげるために繰り返してしまいます。たとえば「手を何度も洗う」「戸締まりを何度も確認する」などがあります。
その結果、日常生活に支障をきたし、強い苦痛を伴うことがあります。性格の問題ではなく、こころの病気の一つとされています。

※当院では強迫性障害に対する専門的な認知行動療法には対応していません。

主な症状と原因

主な症状に「強迫観念」と「強迫行為」があります。
強迫観念は、繰り返し浮かぶ不安な考えやイメージ、罪悪感で、自力で止めることは困難です。強迫行為は、その不安を打ち消そうと繰り返される行動です。
これらの症状に支配されてしまい、本人の生活の質が大きく低下することも少なくありません。

原因は特定されていませんが、脳機能の問題や、元々の性格傾向、ストレスなどが関連している可能性が指摘されています。多くは思春期から青年期に発症すると言われています。

診断と治療法

診断は主に問診で行われ、症状や生活への影響が確認されます。心理検査が用いられることもあります。

一般的な治療法として薬物療法や認知行動療法がありますが、いずれも専門的な知識に基づき時間をかけて慎重に進める必要があります。
薬物療法では抗うつ薬(SSRI)のほか、症状によっては抗不安薬や抗精神病薬を用いる場合もあります。
認知行動療法では、不安な考えと行動の結びつきを弱める試み(曝露反応妨害法など)を行い、徐々に不安に対する耐性を高めていきます。

しかし、すべての強迫性障害の方に同じ治療が合うわけではありません。強迫性障害でも自閉スペクトラム症(ASD)の傾向を持つ方では、強迫性障害のあらわれ方や治療への反応に違いがみられることがあるからです。両者の関係と治療アプローチの違いについては後ほど改めて説明します。

なお、当院では慢性期の強迫性障害の治療が難しいため、基本的に専門医療機関へご紹介させていただきます。また前述の通り、強迫性障害に対する専門的な認知行動療法には対応していません。

薬物療法

強迫性障害には抗うつ薬(SSRI)がよく使われます。

代表的なものは、

  • フルボキサミン(デプロメール®/ルボックス®)
  • セルトラリン(ジェイゾロフト®)

です。

ASD傾向が強く、これらだけで効果が十分でない場合には、

  • アリピプラゾール(エビリファイ®)
  • リスペリドンなどの抗精神病薬

を少量加えることで、不安やこだわりが和らぐことがあります。

心理療法

OCDに有効とされる認知行動療法(ERP)は、ASD傾向が強いと効果が出にくいことがあります。その場合は、

  • こだわりを完全になくすのではなく「減らす」「生活に支障が出ない形に変える」
  • 不安のとらえ方を調整し、「絶対こうしなければ」という考えを少し緩める

といった工夫を重視します。

環境調整

ASD特性がある方の場合、環境を整えることも大切です。

  • 規則正しい生活リズム
  • 過度な刺激を避け、落ち着ける時間・場所を確保する

など、家族や周囲が「やめさせよう」とするのではなく、行動の背景を理解して見守るといったサポートが役立ちます。

強迫性障害(OCD)におけるASD(自閉スペクトラム症)の有無の影響

強迫行為に至る経緯は、自閉スペクトラム症の傾向の有無で違いがあると言われています。

強迫観念の質の違い

ASD傾向のない強迫観念

「やらないと不安だから仕方なくやってしまう」もの。苦痛が強いです。

ASDに基づく拘り

「やると落ち着く」「心地よい」「安心する」もの。楽しさや安心感の要素が強いです。

ASD傾向のある強迫性障害の強迫観念

不安と安心感の両方が関わっていて、確認行動や決まった手順を「やめたいけど不安」と同時に「やると落ち着く」という気持ちで続けてしまうことがあります。強迫性障害を発症する前は安心や快楽の材料であった拘りが、不安を伴う負担の感じられるものに変わります。

心理療法と薬物療法のバランスの違い

ASD傾向がない場合
1.
認知行動療法(CBT)や曝露反応妨害法(ERP)で、多くの方が症状改善を実感できることが多いです。
2.
薬物療法は、強迫行為をもたらす不安の軽減に抗うつ薬や抗不安薬を用います。
ASD傾向がある場合
1.
認知行動療法(CBT)や曝露反応妨害法(ERP)だけでは効果を感じられないことが多いです。ASD傾向による柔軟性の低さや予測できない状況への強い不安などが、認知行動療法(CBT)や曝露反応妨害法(ERP)の受け入れにくくするためです。
2.
そのため、ASD傾向の強い方の強迫症状に対しては、そうでない方より薬物療法の重要度が高くなります。抗うつ薬や抗不安薬に加えて、少量の抗精神病薬を併用することで強迫行為の頻度を下げることが治療の目標になります。

全般性不安障害(GAD)

全般性不安障害では、日常生活のさまざまなことに対して、必要以上の心配や緊張が続きます。症状としては、落ち着かない、眠れない、体がこわばるなどがみられます。

治療のポイント

薬物療法

  • 急性期の強い不安にはベンゾジアゼピン系の薬を短期間使用して症状を和らげます。
  • 持続する不安にはSSRIやSNRIの抗うつ薬を使用し、徐々に効果を出します。
  • 必要に応じて、長時間型ベンゾジアゼピンの定期内服で日中の不安を安定させることがあります。
※ベンゾジアゼピンの長期内服の注意
  • 長期連用すると耐性や依存のリスクがあります。
  • 注意力や記憶への影響、転倒のリスクも高まります。
  • 用量や期間は医師が慎重に管理し、必要に応じて徐々に減量します。

カウンセリング・生活支援

  • 専門的な認知行動療法(CBT)は行えませんが、カウンセリングで不安を整理・可視化することで症状の軽減が期待できます。カウンセリングを希望される方はご相談ください。
  • 睡眠や運動、ストレス対処法など日常生活の工夫も回復に役立ちます。

まとめ

  • 薬物療法で症状を和らげつつ、生活習慣やカウンセリングを組み合わせることで、より安定した生活が目指せます。
  • 早めに医療機関で相談することが、回復への第一歩です。