現代社会では、睡眠に関する悩みを抱える人が年々増加しています。仕事や人間関係によるストレス、生活の不規則化、スマートフォンやパソコンの長時間使用など、睡眠に悪影響を及ぼす要因は身近に数多く存在しています。
「布団に入ってもなかなか眠れない」「夜中に何度も目が覚める」「朝早く目が覚めてしまって眠れない」「ぐっすり眠れた気がしない」――こうした経験はありませんか? これらの状態が続いている場合、単なる一時的な寝不足ではなく、「不眠症」という病気の可能性もあります。
不眠症とは、「十分な睡眠をとるための時間や環境があるにもかかわらず、満足のいく眠りが得られず、日中の活動に支障をきたす状態」が続くことを指します。
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こうした症状が週に3回以上、1か月以上続いている場合は、お気軽にご受診ください。早めにご相談いただくことで、より早い回復や生活の改善につながります。
不眠症はその現れ方によっていくつかのタイプに分かれ、それぞれに原因や対策が異なります。
寝つくまでに30分以上かかるタイプです。緊張、不安、悩みごとがあると、布団に入っても頭が冴えてしまい、眠れないことがあります。ストレスや不安障害、生活リズムの乱れが関係していることが少なくありません。
夜中に何度も目が覚め、再び眠るのが難しいタイプです。加齢、飲酒、睡眠時無呼吸症候群などの身体的な要因のほか、うつ病や不安症状が関係している場合もあります。
予定よりかなり早い時間に目が覚めてしまい、その後眠れない状態です。うつ病に伴う不眠としてみられることが多く、注意が必要です。気分の落ち込みや意欲の低下を伴うことがあります。
睡眠時間は十分でも「よく眠れた感じがしない」というタイプです。自律神経の乱れや、ストレス、浅い睡眠が続いていることが原因とされます。
これらのタイプは複合的に現れることもあり、正確な診断とそれぞれに合った治療が大切です。
不眠症の治療では、原因や症状のタイプに応じて、薬物療法と非薬物療法(生活習慣の見直しや心理療法など)を組み合わせて行います。当院では、薬物療法、カウンセリング、運動療法などを組み合わせて、患者さま一人ひとりの状態に合わせて、無理のない睡眠の改善をサポートいたします。
不眠の程度が強く、日常生活に支障がある場合には、睡眠薬や抗不安薬などを用いて眠りをサポートします。現在では、依存性が少なく、安全性の高い薬も使用されており、必要に応じて医師の管理のもとで使用します。
なお、薬は対症療法であるため、根本的な原因への対応と併せて行うことが重要です。
また症状や背景によっては、うつ病や不安障害、統合失調症などに対する治療薬を用いることもあります。多くは薬効に期待しての適応外の使用であり、それらの薬が処方されたとしても必ずしもそうした疾患であると判断しているわけではありません。
とくにベンゾジアゼピン系睡眠薬では、身体と心理の両面での依存性が指摘されており、現在のガイドラインでは「必要時のみの使用とし、なるべく長期使用しないこと」が推奨されています。当院では、患者さまのご希望やお悩みにしっかり耳を傾けながら、こうした薬物使用によるデメリットにも配慮して治療を進めてまいります。
不眠の改善には、日々の生活リズムや睡眠環境を整えることが非常に重要です。以下のような対策が効果的です。
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中でもジョギングや水泳、ウォーキングといった適度な有酸素運動は睡眠の改善に大きな効果があるとされています。
さらに、ストレスの軽減や、不安への対応として心理的アプローチも有効です。