私たちが日々の生活の中で感じる「ストレス」とは、外部からの刺激(ストレッサー)に対して、心や体が反応することを指します。ストレスの原因として、環境の変化、人間関係、身体的な疲労など、さまざまなものがあります。
ストレスは誰にでも起こりうる自然な反応であり、適度なストレスは集中力ややる気を引き出す原動力にもなります。しかし、ストレスが過剰になると、以下のような心や体の不調を引き起こす原因になります。
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現代社会では、年齢や職業を問わず多くの人がストレスを抱えています。たとえば、学校では、成績や進路への不安、友人関係やいじめの問題などがストレスの原因となります。また職場では、業務量の多さや長時間労働、上司や同僚との人間関係、仕事内容や評価への不満、昇進や異動といった環境の変化がストレスを引き起こし、気づかないうちに心身に負担をかけていることがあります。
近年、ストレスがきっかけとなって起こることが多い「適応障害」は患者数が増加しています。日常生活や社会生活に大きな影響を与えており、注意が必要です。
適応障害とは、ある出来事や環境の変化に適応しきれず、強いストレス反応が心身に現れる状態です。診断基準としては、明確なストレス因に対して、通常の適応反応を超える心理的苦痛や日常機能の障害が生じる状態とされています。発症はストレス因から1か月以内が目安で、最大6か月で治まるものとされています。ただし環境が改善されなければ、それ以上続く場合もあります。
症状は人によってさまざまな形で現れますが、代表的なものには以下が挙げられます。
情緒面 | 抑うつ気分、涙もろさ、気分の落ち込み、不安感、緊張、焦り、集中力の低下など |
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身体面 | 不眠、食欲不振、頭痛、倦怠感、動機や過呼吸(ストレッサーに近づいた際)など |
行動面 | 学校や職場に行けない、対人関係が億劫になる、過剰な飲酒、ひきこもりなど |
このよう症状が強く、日常生活や社会活動に支障をきたすと「適応障害」と診断されることがあります。適応障害は、ストレスの原因となっている状況が改善されると、比較的早期に回復することもありますが、放置してしまうと症状が悪化し、うつ病などに進展することもあります。
適応障害の治療は、「心の負担を軽減し、再び自分らしく生活できる状態を目指す」ことが基本です。主な治療法は以下のとおりです。
ストレスの原因となる環境(仕事や学校、人間関係)に対する対応を検討します。配置転換や、働き方の変更、必要に応じて休職や休学も視野に入れます。適応障害では、ゆっくりと休むことがとても大切です。
適応障害は「うつ病」とは異なり、ストレッサーがなくなれば症状は治まります。しかし現代において、ストレスをまったくなくすことは難しいため、ストレスの捉え方や付き合い方、対処法を一緒に考え、不安や落ち込みを軽減するサポートを行っていきます。
不安や不眠などの症状が強い場合は、必要に応じて、それらの症状を和らげるために薬を使用することもあります。
適応障害は、早期に適切な治療を受けることで改善が見込める疾患です。そのためには、家族や職場、学校、そして医師などによるサポートが重要です。ストレスが続いている、心や体の不調があるという方は、一人で抱え込まず、まずは当院にご相談ください。